マイクル・コナリー『エコー・パーク』(講談社文庫)

エコー・パーク(上) (講談社文庫)

エコー・パーク(上) (講談社文庫)

エコー・パーク(下) (講談社文庫)

エコー・パーク(下) (講談社文庫)

落語というものに魅了される前は、海外ミステリーを中心に読む日々を送っていた。たとえば、私の持っている一番古い『文庫翻訳ミステリーベスト10』(講談社IN・POCKET11月号)は1999年のものであるが、総目録に掲載されている海外ミステリーのうち47冊を読んでいる。大雑把にいえば読む本の半数は海外ミステリーであった、ということ。
ところが、落語というものが生活に入ってきたときから状況は一変。通勤電車の中では、ムーンライダーズなどを聴きながら海外ミステリーを読んでいた、という生活から、通勤電車の中では落語を聴くため、邪魔にならない国内ミステリーを読むことが中心となり、海外ミステリーを買うのは年間に数冊というところまで落ち込むようになっている。
昨年の正月に今のところに引っ越したのだが、そのときも多数の海外ミステリーを処分せざるをえなかった。その中には、エド・マクベインの87分署シリーズ揃い、トマス・H・クックの文庫揃い、ディック・フランシスの競馬シリーズ揃い、などもあった。
今回、マイクル・コナリーの新刊が出た(予告の段階ではチェックから漏れていたのだ)ところから再び状況は一変。早速買い求め、音楽を聴くこともなく通勤電車の中で数日のうちに一気に読み終わってしまった。
そもそもマイクル・コナリーは、抜群のリーダビリティ(読み進め易さ)と濃密なストーリーが共存する稀有な作家であった。その中でもハリー・ボッシュシリーズはシリーズが進むにつれ、その進化を繰り返してきた。ハリー・ボッシュが刑事を辞め、私立探偵となり、シリーズの行方が心配されたときに、ボッシュの舞台は未解決事件班となった。シリーズ前作の『終決者たち』からまた新たな世界が展開されている。ボッシュの執念は未解決事件にこそ似合う。
翻訳ミステリーが全く売れないらしい。昔好きだった私立探偵小説もそのほとんどがシリーズ半ばにして翻訳が中断している。
このシリーズには絶対そんなことがあってはならない。そのためにも今後は翻訳ミステリーの感想を書いていきたい。そんなことを思わせる傑作。内容は是非実物でご確認を。