2011年の落語

私のネタ帳は手書きのノートです。その興行を思い出しながら演目を書き込むことで記憶にとどめようと思って、2009年から始めて今年で3年となりました。そのため、「何を何回聴いた」というデータには使えません。

ということで、その記憶の中から、10席を選んでみました。座興としてお楽しみいただければ光栄です。

●入船亭扇遊 「付き馬」 (1月27日 県民ホール寄席〜入船亭扇遊独演会〜@神奈川県民ホール小ホール)

某書での扇遊師匠のインタビューで「独演会は地方以外ではやらない」というコメントを読んだばかりの時に、独演会の噂を聞いた。いてもたってもいられず、遠い会場であるのにもかかわらず前売り券を購入した。そして、会場の半分も入っていないところで、聴いた噺。扇遊師匠の廓噺はとても楽しいが、「付き馬」をやられるというのは聴いていなかった。遠い横浜の地まで来た甲斐があったというもの。能天気な男を絶妙に表現していた。初めて県境を越えて落語を聴きに行った、ということでも思い出深い一席。

●入船亭扇辰 「鰍沢」 (3月2日 入船亭扇遊・扇辰〜兄弟盃の会〜@東京芸術劇場小ホール2)

今回で2回目の兄弟盃の会。前回は都合で行けなかったので、初参加。扇遊師匠の「引越しの夢」を受けて、「鰍沢」。本当に雪の山奥の小屋を想起させる高座。それまでも好きな噺家さんだったが、この「鰍沢」を聴いて本格的にファンになった。それほど素晴らしい高座だった。

柳家権太楼 「百年目」 (5月7日 鈴本演芸場五月上席夜の部トリ)

この興行は特別興行で、権太楼師匠のネタ出し。その中で「百年目」をチョイスして、これが大成功した、という噺。小三治師匠も中入り前に上がってました。

柳家喜多八 「笠碁」 (5月29日 鈴本演芸場五月下席夜の部トリ)

少ないお客さんの前で渾身の「笠碁」。隠居二人がチャーミング。

立川志の輔 「江戸の夢」 (6月21日 巣鴨四丁目落語会@studioFour)

小さい会場で超メジャーな噺家が本気でやった噺を聴けた、というだけでも貴重な体験。

五街道雲助 「夜鷹そば屋」 (7月30日 喬太郎の古典の風に吹かれて昼の部@紀伊國屋ホール

噂で聞いていて、テレビでやっているのを何回も視ていたけれど、古典の落語会で厳密には古典とは言えないけど、古典のマインド満載の噺を直接聴けたことが嬉しかった。

柳家さん喬 「たちきり」 (8月9日 池袋演芸場八月上席昼の部トリ)

前日の「百川」でがっかり(噺自体が嫌いなので)した翌日の「たちきり」に大興奮。噺も最高でした。

古今亭志ん輔 「火事息子」 (11月17日 志ん輔・扇遊の会@鈴本演芸場

丁寧な説明も邪魔にならず、噺の理解の助けになった。そして歌うかのように噺が展開する、ポップな「火事息子」。

立川談笑 「柳田格之進」 (12月2日 立川談笑月例独演会@紀伊國屋サザンシアター

稀代の納得感のない噺を再構成し、すっきりと腑に落ちる噺となり、終わったときには爽快感すら感じる素晴らしい高座でした。

桃月庵白酒 「宿屋の仇討ち」 (12月17日 三田落語会昼席@仏教伝道センター)

今年は白酒さんの会心の高座になかなか出会えなかったけれど、最後のチャンスに抱腹絶倒の高座に触れることができた。

暦日順です。順位はありません。